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京都府立図書館 [建築、デザイン]

今回の京都一日探索は、

師匠のリクエストに沿っての気ままな巡回のメニューなので、

近代建築探索の時間は全くとれないであろうと諦めていました。

圓通寺の次にどこに行きたいか師匠に問うたところ、

「平安神宮!」という意外な回答。

いやあ、師匠はなんて親孝行な息子なのだろう。

なにしろ平安神宮のすぐそばには、2件もの素晴らしい建築物があるのですから!(笑)。

 

なぜか上機嫌な父親の挙動に一抹の不安を抱く師匠と共に、

まずは平安神宮へ。

heian.jpg

 

建物の配置や配色は、神社の常識とはかけ離れてとても中国風です。

師匠いわく、「神社だと本殿と正門は神様の通り道でつながっているのにここは違うのだ」と

えらい玄人筋な解説。

平安京の大内裏を復元することを目的としていたので、

神社でありながらも建物の様式は神社とはちょっと違うのでした。

師匠の目的は「平安神宮の桜」だったのですが、

3月末というのに寒さで桜の蕾は固いままで全く見どころなし。

残念でした、じゃ次はこちら、

ということで訝しがる師匠を引っ張って行ったのがこちら。

furitsu1.jpg

「京都府立図書館」、1902(明治42)年竣工。

設計は、京都近代建築の祖、武田五一です。

武田作品の中でも初期の名作として名高い建物でしたが、

あの阪神淡路大震災で致命的な損傷を受けたため、

正面の外壁だけが残され、ガラスと鉄の新館に飲み込まれたような形になってしまったそうです。

 

武田五一を語る上で欠かせないのが、欧州留学中に受けたアールヌーヴォーの影響です。

留学の際、師である辰野金吾が本来彼に課していたのは様式建築の習得だったのですが、

アールヌーヴォーにハマった武田はその課題をすっかり放り出してしまいました。

もっとも、最初の留学先であるロンドンの気候や、規則性や制限の多い様式建築は

彼の元々の志向と合わなかったようです。

アールヌーヴォーやセセッション(分離派)といった

当時欧州で台頭しつつあった新しいトレンドにすっかり夢中になり、

師からの帰国命令まで無視してしまったので帝大教授の道を諦めたとか。

そこで関西に活動拠点を移して、京都近代化のプロデューサーとなる一方で、

京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)や京都帝大で教鞭をとり、

数多の有意な人材を送り出したのでした。

 

そんな武田のアールヌーヴォー志向は、

初期作品である京都府立図書館のディテールによく表れています。

furitsu6.jpg

金色のテラコッタは、大型の素焼き。

furitsu5.jpg

階段と2階鉄扉の装飾は、まぎれもなくアールヌーヴォーです(選挙の看板がジャマ)。

furitsu4.jpg

ピラーと屋根部分の円形の装飾もヌーヴォーしています。

個人的に好きなのは、正面センターの題字部分。

furitsu2.jpg

これぞアールヌーヴォーって感じがします。

サインとしても秀逸じゃないでしょうか。

furitsu3.jpg

知らない人にこのカットだけ見て、「ウィーンですよ」といっても疑わないでしょうね。

武田ほどあの時代の欧州のエッセンスを吸収した建築家はいません。

「京都府立図書館」、規模としてはあまり大きくないし派手さはありませんが、

佇まいに気品があり、内からにじみ出るような美しを感じる建物でした。

(つづく)

 

 

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コメント 6

carotte

ほんとにウィーンかと見間違うほどです。テラコッタが目を引きますね。そして、題字にセンスの良さが表れてます。これだけ頑丈そうに見える建物でも、地震のある国ではどうしても影響が出てしまうんですね。
by carotte (2011-04-10 21:42) 

cjlewis

ウィーン、、、
はい、信じちゃいます。(笑)

正面部分、あの佇まいに旧漢字、
海外の建築家もすごく興味を示しそう。
by cjlewis (2011-04-11 15:15) 

Jetstream777

平安神宮、パッとみると中国ですね。 (笑)
京都府立図書館はウィーン。 なるほど。
by Jetstream777 (2011-04-17 12:19) 

opas10

carotteさま
阪神淡路大震災がこんなところにまで影響を与えたのかと、今更ながらビックリしました。同時に、今回の震災は東北地方に残っていた貴重な近代建築遺産にどれだけ影響を与えたかを想像すると・・・・。

Cjlewisさま
非の打ちどころのないアールヌーボーにあの旧漢字の組み合わせ、日本人よりも外人の琴線に触れそうな感じですよね。

Jetstream777さま
平安神宮にいると、なぜか故宮を見学したことを思い出しちゃいました。あの時代は、中国の様式をどれだけ忠実にコピーできるかが「先進性」のモノサシだったようで。

by opas10 (2011-04-17 12:37) 

kuni

師匠の目的は「平安神宮の桜」、、、でしたか。こっちを先に見るべきでした。
 確かに、ウィーンかも、アールヌーボー大好きkuniとしてはかなりいい感じです。
by kuni (2011-04-17 21:33) 

opas10

kuniさま
師匠の平安神宮での目的は「桜」だったのですが、ちゃんと次の場所にも目的があるのでした(笑)。それにして京都の近代建築は本当に奥が深いです。
by opas10 (2011-04-24 20:20) 

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